BC SHORT Back Country Short Ski Mountaineering

カテゴリー: BC SHORT

53x RIDGEs (ノーカウント)北ア常念沢源頭滑降

BC SHORT発祥ど真ん中の地である
北ア常念岳は山頂までがんばったぁ~!!

結果は、とほほのホ、です。
なぜなら、尾根滑降はこの時期ないことを前提で
汗をながしたので。

ただし、滑ったのは
世間ではあまりなじみのない
常念沢の源頭をちょろっと。

これにて今シーズンの
当チャレンジを終了いたします。

ありがとう!!
※当企画をまとめたレポートは
追って書きます

▢滑降後の動画
FACEBOOKより

【RIDGE  0】2025/6/9 mon
□常念岳2857m
□目標標高差(約1500m)
□参加者:ソロ
■結果登り標高差/距離:約1500m
■結果SKIダウン標高差/距離:約100m/約100m
■タイム:TOTAL 8H
■評価:ランクD (※※A~D中、ノーカウント(この場合は記録しないこともある)

▢所感
この日の肝は
・雪庇はりだす(ちょろっと)、高度感のあるマイナー稜線からの
季節はずれの滑降(ぎゃくにいうと、だれも見向きもしないポイント)
・つかの間の滑降後、ハイマツ急斜面にて、シューズ履き替えと
稜線までの急登を登り返すこと(ギアはスリング&カラビナは用意したが、
トランジットポイントがたまたまよかったので、使わずに稜線へ復帰した)
・なんど登っても降りてもキツイ、三股P⇔常念岳ルートの1DAY登山。
※筆者は、かつて当ルートをサブ2していたが!エッヘン自慢

 

53x RIDGEs 20 前常念直下の南東尾根2410mまで

かつて目指した常念南東尾根を
13年の時を経て。
まさにBC SHORTでしか滑降できない
難易度の高いヤブ+凹凸粗い急斜面は
またいつか山頂までコンプリートしたい
※beer飲みながら書いてます

【RIDGE 20】2025/5/7(wed)
▢北ア常念岳の前常念下は南東尾根2410mまで(三股Pより)
▢目標標高差・距離:none
▢参加者:マキさん
■結果登り降り標高差/距離:±1130m/8.4㎞(往復)
■結果SKIダウン標高差/距離:約400m/約1.4㎞
■タイム:TOTAL7H30M
■評価:ランクB(※A~D中、B:ゴキゲンなRIDGE!参考にしてネ

▢所感
備忘録として、最近は準備万端なれども登山にならずノーカウント…
というのがおおく、以下に
・北ア中房バイク敗退
・北ア常念一の沢は山の神さきで撤退
・北ア常念三股からは、駐車場がGW中の大混雑にて撤退

もちろん、ソロでいけばコンプリートできた登山も
あるけど、いまはパートナーのマキさんがBC SHORTが
どんどん楽しくなってきてるときなので、こちらのが大事。
さあ、そのスカイランニングに来年から復帰宣言した
パートナーさんと、体力勝負の三股~常念を目指す。
よく考えてみると、春夏秋冬126回超この常念山域に入っているわたしも、この残雪豊富な時季の三股からは、いちども入ったことがなかったのだ。

入ってみてびっくりだ。
あの九十九折り1000mアップの雪道が、なかなか大変で。
数百メートルも登ったところから、急斜面にへばり付く
硬めの雪面は、さすがにシューズスパイクや軽アイゼン必須。
さらに、今回のテーマはザック+荷物を極力減らして軽量化をして山頂を目指す、FAST&LIGHTを明確にした。
20ℓの軽量ザックに、強度をたかめるべく別物ナイロンループをベルトに付け、尾根滑りゆえに、大胆にスコップ・ゾンデ・ビーコンは荷物から外す。

ザック本体は軽くていいが、代償としてSKI&ブーツ等の重さが、か弱いショルダーベルトに一針に注がれ、
食い込む肩がなんとも不快である。

ここは、何度も経験してるが、さらに快適さをめざすなら、相応なザック作りをするしかないと思っている。

う~~~ん
南東尾根は、東尾根よりもむずかしいな。
SKIダウンにおいては。
そもそも、こんなところをSKI滑降する人なんて
かなり奇特かハイヤーセルフな人かな(笑)

2013年に、いまこそ巷では有名になった
冬の北ア常念岳東尾根を仲間と開拓していた頃、
その記事を読んだ方がSKIでチャレンジしたらしく、
散々愚痴を吐いていた(笑)
「SKIなんてするとこじゃねーだろ!!ふざけんな」って。
でも、お陰でBC SHORTが生まれるキッカケとなったわけ。

とまれ、
99cmの相棒と、まだ見ぬ景色をさがしに
湧き出るアイデアを淡々とこなしていこうと思っている!

by: Y.Tコメディアン

53x RIDGEs (ノーカウント)北ア常念岳乗越2450m

北アルプスで、7H登山も
ノーカウントの一本に?!

【RIDGE  0】2025/4/22(tue)
□常念乗越
□目標標高差(none)
□参加者:ソロ
■結果登り標高差/距離:1482m/9.6km
■結果SKIダウン標高差/距離:565m/1.6km
■タイム:TOTAL 7H
■評価:ランクD (※※A~D中、ノーカウント(この場合は記録しないこともある)

▢所感
BC SHORTが生まれるきっかけとなった聖地に
今年も戻ってきた。
この山域はわたしの登山史原点である。

一の沢ルートは、昨年からの林道崩落により
いまだ通常運転とはならない状況である。
ならばと、e-bikeでヒエ平登山口までスイスイのスイ~♬ と
フロントギアのない折りたたみチャリで
SKI背負って頑張ってた10年前とは
似てて非なる、余裕のアプローチとなった。

GWまえの林道通行止の解除時期ではあるが
そんな事情から、登山者は皆無。
ルーファンは、例年にもれず手こずりつつも、
歩を進める。
おれって、学習能力ないの?と自問自答しつつ
自信をなくしながらの登山は、慣れたもの(笑)

この一の沢ルートは、グリーンシーズンという
いわゆる夏山登山なら、北ア入門として最適であるが
残雪期はまだまだ夏道もない雪山である。

さて、複数の沢が交差する笠原沢へ着いた。
例年よりも残雪が豊富だ。ゆえに複数の渡渉(沢を渡る)
をせず、大雪原をゆうゆうと進むことができる。

一の沢源頭部では、急登までSKIを履いての
ハイクアップで粘ったが、怖くなってツボ足にチェンジ。
急登ゆえに、高度感はそこそこあるが、
2本くらいある先行トレースよりすこしわかりやすい
トレースを雪面にキックで刻みつつ、
常念小屋のある常念乗越にようやくたどり着く。

数年前までは、小屋番のきょうちゃんにこの時期は
あって談笑するのだが、彼はすでに「里の人」であるがゆえ
寂しいかぎりだな。

今シーズンは、残雪豊富だが、日中の気温が高いゆえに
重い雪を力づくでいなしつつ、来た道をSKIダウンしながら
そそくさと下山した。

記:田中ゆうじん

53x RIDGEs 17 奥飛騨は平湯温泉スキー場山頂から

乗鞍よりつながる壮大な2500M稜線…
にはほど遠かったが
平湯温泉スキー場の標高差とロングルートに驚愕
次回は必ず金山岩へ

【RIDGE  17】2025/3/24(mon)
□金山岩(2532m)
□目標標高差(none)
□参加者:マキさん
■結果標高差/距離:約+120m/0.9km
■結果SKIダウン標高差/距離:-600m/3.0km(スキー場含む)
■タイム:TOTAL 1H30M
■評価:ランクB (※A~D中、B:ゴキゲンなRIDGE!参考にしてネ

▢所感
この日は、奥飛騨トリップの1日目。
松本を出たのが昼前ということもあり、今回は下見がてら
当尾根をBC SHORT。
同行した2021年からBC SHORTを一緒に主宰&
プレイしてるマキさんは、ミラクルな理由から
いまはビギナーとして一から取り組んでいる。
ゆえに、とくに無理はせず、お気楽なスキー登山とした。

とはいえ、当スキー場のリフトに乗るのははじめてだったが、
写真最上からさらに奥の山頂へと、急峻な山肌に驚嘆しながら
標高差550mアップはなかなかの迫力。
ぱっくり開いた雪面のクラックから、木立ちの急斜面尾根は
尻がすくむ様な説得力をもって問いかけてくる様だ。
「簡単に来るんじゃねえぞ」と。

さあ、人もまばらなリフトトップからは、シールを着けて
スノーシューやスキーのトレースに沿って尾根の取りつきへ。
雲行きもあやしく、強風と相まってなかなかの状況。

金山岩までは大きく3か所くらい登り返しがあるし、
こまめにアップダウンを繰り返す尾根は、この短い区間だけでも
一筋縄にはいかず。
でも尾根らしく好きな感じだ。

次回は金山岩まで!と意に刻みつつ
1kmもいかないあたりで引き返す。

ゲレンデトップからみえるオープンバーンからの、
急斜面ではない湯の平コースを滑降したが、ストップ雪に
手間取りつつも、なかなかのロングルートで楽しませてもらった。

このスキー場は、平湯界隈で山に入れないときは
急峻な尾根や林間もあるし、なかなか楽しめそうだ。
※滑降禁止かどうかは調べてない

ぜひまた来たい!


赤いラインが登ったセクション。
黄色は当初のルートでピンクはゲレンデ内

53x RIDGEs 16 大笹峰1807m(ブランシュスキー場山頂より)

山頂まではリフトで楽々
眼前に八ヶ岳、さらに北アや浅間山、
遠景に富士と眺望抜群の
BCビギナー向きのいかした尾根。
ただし、南岸低気圧後の積雪豊富な
貴重なタイミングを狙うべし

【RIDGE  16】2025/3/23(sun)
□大笹峰(1807m)ブランシュスキーリゾート山頂~裏の尾根を滑降
□目標標高差(none)
□参加数:MAKIさん
■結果総標高差/距離:約310m/1.2km
■結果SKIダウン標高差/距離:-150m/0.6km
■タイム:TOTAL 20分
■評価:ランクB (※A~D中、B:ゴキゲンなRIDGE!参考にしてネ

▢所感
ここはなんども滑って登っているエリア。
ただ、今回の尾根滑降という目線では
滑降ルートをスキーヤーズレフト(滑降する目線で左側)へ
約20mほどラインを変えることにより
尾根滑降らしさがでる、というところだ。

ルートは短く、今回はレストハウスバウムへ
時間厳守で戻らなければならない!
ゆえに

緩い斜度の尾根の手前で滑降を止め、ハイクアップモードへ。

この日は、気温もたかくゲレンデはストップ雪に
変化する時間帯ということもあり、SKIは走らなかったけど
雪質のよいザラメ時に(溶けるのがはやいのでここはとくに難しいが…)
ビギナーから中級車のBCプレイヤーには
ぜひ試していただきたい!

きっと、BC(バックカントリー・裏山)に魅了されるはず。

今後も、当フィールドはBC SHORT体験会にて楽しまさせていただくので、
だいじに観察していきたいフィールドである!

53x RIDGEs 15(×2ridges 2/2) 茶臼山(2006m)

松本市にある住居ログハウスから
ほど近い茶臼山が
こんなにも妙味があるとは!!
この日2本滑ったうちの
メインである2本目だ。

【RIDGE  15】2025/3/18(mon)
□茶臼山(2006m)
□目標標高差(none)
□参加数:ソロ
■結果総標高差/距離:約1806m/9.7km
■結果SKIダウン標高差/距離:-600m/2.8km
■タイム:TOTAL 3H30M
■評価:ランクB (※A~D中、B:ゴキゲンなRIDGE!参考にしてネ

▢所感
まず言っておきたい。
ランクBとしたけど、尾根がセクシーじゃないというだけで、
いくつかの登り返しこそあれど、素晴らしい尾根である。

茶臼山山頂から夏道を横目に、ご機嫌に滑っていくと
突如現れる、廃屋と化した山小屋が、
えーと、昼間なのにけっこう不気味…。

気をつけたいのは、スキーヤーズレフト(滑降する目線の左側)は、
わりと急斜面+樹林帯エリアなので、この場合はそっち行かない様に!

幾度とある登り返しは、尾根滑りの宿命であるけど、
古のころより、ここもおそらく積雪時には “スキー” で
この山域を移動してたのかなぁ~なんて妄想しつつ、
ときおりスマホの「スーパー地形ソフト」という
あの大好きなカシミール3Dと連携したアプリをたよりに
SKIダウンする。

この日は、BC SHORTを一緒に主宰してる
パートナーでもあるマキさんの娘と2人で
デートする約束だったので、
下山1200をめざし、尾根を脱落する(笑)
しかし、その樹林帯がまた、また… またまた……
BC SHORTの機動性を存分に発揮できるいかした時間だった!

じつは、10数年前、ソロ&長いスキーでこのあたりを
チャレンジした経験があるけど、
スキーの下手さもあいまて、ブーツのツボ足で
散々苦労して下山した経験がよみがえる。

スキーなんて、ぜんぜんダメだろ!?
と、自分の技術はさておき、雪山登山に幻滅したとき(笑)
でも、長いスキーでは、やはりこの山域を楽しめることは
おそらく現実的ではない、と断言しとく。

1DAYで2本の尾根を登って滑るには、
こんな時間ではなかなかむずかしいけど、
大満足の茶臼山チャレンジとなった。

ふれてなかったけど、登りのルートは
ピンクテープ(登山道フォロー)を目安にした。
登山道もフォローできて、ルートファインディングも
もちろんやれる、BC SHORTは
本当にすばらしいアソビだと実感した日だった。

53x RIDGEs 14(×2ridges) 茶臼山(2006m)

松本市にある住居ログハウスから
ほど近い茶臼山が
こんなにも妙味があるとは!!
この日2本滑ったうちの最初の1本は
標高差にしてわずか94mのいかした急斜面の滑降だった!?
※2本目15はこの後に記す

【RIDGE  14】2025/3/18(mon)
□茶臼山(2006m)
□目標標高差(none)
□参加数:ソロ
■結果総標高差/距離:約800m/3.5km
■結果SKIダウン標高差/距離:94m/0.36km
■タイム:TOTAL 2H50M
■評価:ランクA (※※A~D中、A:超ゴキゲンなRIDGE!おすすめ

▢所感
ようやく出来た、一座で複数の尾根滑降。
効率重視には決してしたくはないが
なんといっても尾根(RIDGE)のチャレンジだぜ?!
山の特性からいっても、山頂や稜線から
尾根は複数伸びて地上にむかっているもの。

つまり、それだけ妙味のある”個性的な場所” が
公にないしは皆さんが知らないだけで
たくさんあるわけだ。

ただし、この場合豊富な積雪があるのが条件。

だったら、やるでしょ。
なぜなら、オモシロイ人ってあなたの周りにいますか?
みんなおなじことばかりしてて、風がわりな
ことをやる人がでてくれば、叩いたり、無視したりと。

批判を乗り越え、”周囲とちがう存在であること” に
憧れがあるのに、その実、そうなることを怖れる。

ゆえに、ニッポンは新しく、かつユニークなコトが生まれてきずらい風潮があると。

そろそろ、形骸化したエセ資本主義経済や
皆がいいからと、主体性のない美人投票という旧態価値観に
NOといいませんか?

すみません、オジサン愚痴っぽくなってるな。
ただ、これだけは言いたいんだけど、多様性など、
個性やオリジナリティをだいじに!というわりに、
ニッポンではどんどん個性の均一化が加速してる
様な気がしてて。

さて
この日のメインは、このあとに書く15であるが、
この尾根は時間に余裕があれば、ぜひ扉峠まで
試してみたかったけど、登り返しや平坦が
わりと多めなことは、十数回は夏道を通った
経験から既知である。

でも!
この標高差-94mは、とてもいかしてたのでAである。
ロケーション、急斜面、尾根のセクシー度合など、
ランクAに異論なしだ。

しかも、ストップ雪ならぬ、「ストップ岩」が
急斜面の細い尾根に地雷の様に容赦なく出現し、
かなりの高度感+地雷感=恐怖感を、
否応なしに見せつけられる!

つぎ、またこの茶臼山を通って三峰山にむかうことが
できるのであれば、ぜひ扉峠まで滑降してみたい。

53x RIDGEs (ノーカウント)根子岳(2207m) ~奥ダボススノーパーク

残念ながらノーカウントの一本とする!

【RIDGE  0】2025/3/9(sun)
□根子岳(2207m)
□目標標高差(none)
□参加数:3名(BC SHORT体験会。講師2名を除く)
■結果登り標高差/距離:605m/3.3km(リフトを含まず)
■結果SKIダウン標高差/距離:780m/5km
■タイム:TOTAL 3H
■評価:ランクD (※※A~D中、ノーカウント(この場合は記録しないこともある)

▢所感
今回は初のノーカウントてか。
しっかり登って、しっかり滑る…
しかも、氷と新雪のミックスな雪面だ。

でも、しょうがないっしょ
たしかに、尾根を滑ってはいるけど
当企画には、やはり疑問符が。

なので、初のノーカウントとした。

でも、BC SHORT体験会がメインのこの日
参加者の皆さまには、スリルと頑張りを感じ
とても良いBC SHORTだったな!!

当日、リードしてくれた
BC SHORTアンバサダーのジョニー倉島さん
ありがとうございます😊

ところで、第二期(延べ30セットー2セット)が
完売したよ。
本当にありがとうございます!
来季も製作依頼して、進んでますので
こうご期待!

53x RIDGEs 13 飯縄山(1917m) ~いいづなリゾートスキー場

シゴトまえの一本がきつかった~!

【RIDGE  13】2025/3/4(tue)
□飯縄山(1917m)
□目標標高差(none)
□参加数:ソロ
■結果登り標高差/距離:730m/2.5km
■結果SKIダウン標高差/距離:1032m/3.5km
■タイム:TOTAL 3H
■評価:ランクA (※※A~D中、A:超ゴキゲンなRIDGE!おすすめ

▢所感
つい3日前のRIDGE12の霊仙寺山の暖かいBS(BC SHORTの略)登山が
うそのような、冬に逆戻りした厳しい天候であった。
最高到達地点までのリフトが運行してなく
一本目のリフトを降りてからは、ノートラックのゲレンデハイクアップとなった。

前線を伴う低気圧と低気圧の間とはいえ、風速8mに雪も降りはじめ
容赦ない西風と寒さに、心はゲレンデハイクアップの時点で折れ始める。

この時点で、まずい、スタート時間が遅れてる(10:00)うえに、
下山後は長野市で仕事あるのよ…とね。

数日前の気温上昇でゆるんだ雪面がふたたび氷化したところと、
今週降った新雪と、腐りかけたストップ雪のミックス。
これは、先日のようにはいかないな…、との予想はあたり、
苦戦しつつ高みをめざす。

なかでも、霊仙寺山と飯縄山をつなぐ稜線のハイクは、
尾根上ゆえの複雑なアップダウンや雪庇を避けて
「すこし下をすすむ」というマイルールを無視して、
「余計なシゴト」ばかりの、
超ブサイクなルーファン(ルートファインディング)
となった。

さて、大幅に時間を要してたどり着いた飯縄山山頂。
風雪もそこそこあるが、まだ大丈夫。
でも、5分はじっとしていられない過酷な状況下ではある。
北アに厳冬期ソロで12H以上もBSしてた頃は、なんとタフだったのか…
といまさらながら、懐古しつつ現実を知るのだ。

南峰へつづく稜線上に、同じく風下にて装備チェックをしてる
2名の登山者が100m先からこちらをみてる。

ええい!SKIダウン開始。
氷でスキーに遅れ、ストップ雪でスキーを引きずられる。
それが1ターン毎にくる状況に、下山までが思いやられる…。

終わってみれば
雪質が安定(1パターン)であれば、極上の尾根であった。
オープンバーンあり、木立ち&急斜面&細い尾根滑降あり、
長いスキーでは決して楽しめない、素晴らしい尾根であった。

滝ノ沢がおもった以上に立ちはだかる壁となり、
最後はブーツ歩行での車道あるきとなったが

今夜もうまいビール確定だな

と、汗冷えしたカラダに車の暖房をガンガンにして
里へと下りていった。

53x RIDGEs 10 佐幌岳(1059m)サホロリゾートスキー場 北海道1/2

【RIDGE  10】2025/2/23(sun)
□佐幌岳(1059m)
□目標標高差・距離:D+654m・6.0km(トータル)
□参加数:9人(北海道BC SHORTフリークの皆さん)
■結果登り標高差/距離:同上
■結果SKIダウン標高差/距離:上記
■タイム:TOTAL2H30M
■評価:ランクB (※A~D中、B:ゴキゲンなRIDGE!参考にしてネ

▢所感
昨年につづいて第2回となった
北海道BC SHORTオフ会!!

主宰の私たちは、今季最強寒波到来で、しかも
新潟⇔小樽(北海道)のフェリーという
日本海・豪雪・交通渋滞・荒波というハードルを乗り越え
なんとか、新潟港のフェリーに滑り込む!

エッヘン、わたしはこういうギリギリな状況における
精神的&運転技術のタフさには定評があり(笑)
同船したマキさんからは、御礼にフェリーのレストランで
好きなものをご馳走してもらった。

おとこは、こういうときに試されるのです。

ただ…、冬の日本海は波高し!
船酔いなんかしない私は、リバース×5くらいして憔悴…。
ダメじゃん(笑)

さあ、小樽・札幌・占冠・サホロとクルマを飛ばして
親愛なる北海道の皆さんと再会。

最下より許可をもらったうえで、ハイクアップ(自分の脚で
スキー板の裏に滑り止めのシールを着けて、登っていく)

スキー場トップであれど、ここは佐幌岳。
厳しい雪山だった。北海道は、緯度が本州より高いので
標高2000m前後といえども、北アの3000m級に匹敵するとか。

雪質は、筆頭の藤崎ジェットさんいわく
ちょい重いパウダー
というけど、中信の雪で悪戦苦闘してるわたしからすれば
極上パウダーである。
ほとんどが、スキー場のオープンバーンの際の尾根滑りではあったが
ハイクアップもしたし、絶景の尾根であったので一本とした。

中国資本の当地であるそうで、ゴンドラ代も値段が高すぎるが、
やはりここは北海道、すばらしいフィールドだった!

BC SHORT誕生の瞬間!? 北ア常念岳厳冬期単独1FA~ “BC SHORT”というNewモード vol.4/4

快晴の常念岳山頂(2,857m)は、
悲しいほどの静寂とAwesomeな景色を独り占め。
ただ、気持ちはその好環境とは裏腹につねにびんびんと、
ある種ストレスにも似た異様なテンションが半端ない。

しかしあれだ、ソロの山頂とは得てして地味なものよ……。

到達の喜びと”超緊張の瞬間”
の先延ばしは20分にとどめ、
ヘルメットを被り、ブーツのバックルを固定し、
スキーを履いた。
ショートSKIがこの壮大な景色のせいもあってか、
とくに短く感じる。

自分自身、スキー歴9年、山スキー歴9年。
北アルプスをはじめ、
頚城山塊(くびきさんかい)や小谷山域、
山岳スキーレースに里山と、
幾度となく自らがやるこの緊張と興奮のスキードロップの瞬間には立ち会ってきた。

今回のその緊張と興奮のボルテージは、
そのどれをも上回っていた、というよりも違っていた。
もしかしたら、このBC SHORTという自分で始めたスタイルでの
北アルプス厳冬期ソロで、
しかもこの山頂から尾根を滑降していくという前例がない
(実際はあったとしても記録としては見つからない)
ことへの、あの未知なる恐怖感。

それは、純白の雪面を、
誰かがつけたであろうトレース(足跡)なしに、
自らが未知なるルートを選びながらすすんでいくあの感じにも似ている。

いつか誰かが言った、
「絵を描くなら、キャンバスをはみ出せ」という言葉が、
45歳の自分を強烈に後押しする。

山頂から森林限界へとつづく街からもみえる
あの美しいリッヂライン(尾根)は、
降雪から数日間風に散々叩かれ、
一部をのぞいてほとんどがいわゆるシマリ雪。
春のザラメ雪ほどで好みではないが悪くない、
滑れるはずだ…。

ええい、今夜も必ずウマイBEER飲んでやるぜ!

山頂から右へ切れ落ちる稜線と岩の間にある
1m幅のトラックを、スルスルと真っすぐSKI DOWN。

1ターン目、2ターン目、よし悪くない!!

常念小屋との分岐から前常念岳へとつながる尾根に進路を変える。
今回は、尾根から登り同尾根を滑る。
いわゆる、”Climb up to a ridge and Ski down the ridge”
という自分が提唱する”BC SHORT”を代表する典型的スタイルだ。
自分が登ってきたトレースを例外をのぞいて再びなぞる滑降なので、
視界が良ければルートファインディングは難しくはない。

幅広のridgeや、すこし鋭いridge lineを街に向かって滑降する。
冬はアイゼンでしか歩いたことのないこの尾根を、
SHORT SKIで滑降する滑稽さ。
ターンを刻むごとに高度をぐんぐん下げていくこのスキーの妙味。
四季をとおして60回以上は登ってきた
このMt.Jonen-dakeでの初めての体験…。

緊張と興奮が綯い交ぜになった脳は、
もう完全にトランス状態。
さっきまでいた山頂が振り返るたびにどんどん遠くなっていく情景。

今夜はウマイBEER決定だ。

FOOOOOOOH!!

思わずでる雄叫び。

興奮状態の男が再び冷静さを取り戻したのは、
往路の歩行で抜け落ちたポイントにて、
再びこんどはスキーで落ちたことだ。
貧祖な学習能力が露呈する瞬間である。

春によく滑る北側大斜面で一気に高度を落として、
トラバースライドをすれば尾根の先でルートに復帰できるし、
時間も短縮でき美しい滑降ラインとなる。

しかし、この日は転倒のリスクを最大限に考慮し
前常念の難しい岩稜直下からスキーを脱いで高度を落としていった。
(※訂正、じっさいは前常念直下からさらにその先のピークまでスキーは履いたまま)

しかしこいつがまたいやらしい。
歩行してても足のすくむスティープ(急斜面)。
スキーでも瞬間に2ターンするだけなのに、
死の匂いが漂うのだ。

ウマイBEER…、いやいや今回は十分に飲めるはずだ、
とエクストリームに後ろ髪を引かれる自分をいなす。

標高約2,200mの森林限界のボーダーまでは、
再びスキーでの滑降で高度を下げた。
まだまだ先は長いし標高もあるのに、このうえない安堵感だ。
この先は、以前なんども徹底してヤラレた
木立ちとアップダウンの”SKI殺し”の
長いダウンヒルが待っているにもかかわらず。

ただもうそんなことはどうでも良く、
ただただ順当に降りていける自信が、
なぜだかあったようだった。

ヒールフリーでおもに滑降した。
自撮りの動画みていても、
なんというか粗野な滑りかた極まりないが(笑)、
カッコ良く滑ることは、
山でのSKIがもっと速く安全にできるようになってからの
テーマだと思うし、そうなれば、

自然と身についてくることだとも…。

須砂渡の林道ゲートを
夜中の2時6分に出発してから15h10min後、
ショートスキーを背負ったブーツスタイルでゴールした。
もちろん、いつもの「もう山は当分いい」の心境も充分にある。

なんて悦に入っていると、あらたなことが判明した。

じつはこのタイム、
4年前にやった2013年の自分の13h25minとくらべても2h近く遅い。
もちろん、雪が少ないのでその分迂回をする林道の多用やロスト、
雪質やソロでのラッセル、
そしてソロなのでペースがゆっくり(自分の場合)、
また撮影の手間といったロスはあるが、いかがなものだろう?

さらにおおきな関心事はなんといっても下山タイムだ。

2013年は4h25minで、今回はなんと4h40minだと!?
あの、スッコロビながら無残に降りてきたときよりも、

15分も遅いとは……。

嗚呼、BC SHORT~(泣)

※この事実が判明したのはこれを書いている2018年2月のこと。
※また、この日は林道に雪がないので
下山時もブーツで歩いたりしたことから、
時間的な差異をくらべるのはすこしナンセンスでもある。

よし、今回もあの”心の技術”をつかってつぎへいくとする(笑)

とにかく、
まだまだこのスタイルで行ってみたいセクシーなRIDGE LINEは、
数多くあるのだ。

【おわりに】

最後まで読んでくださりありがとうございました。
この”BC SHORT”などと、
自らが勝手にネーミングし独り滑り出してから早3シーズン目に入りました。

基本、尾根を登って尾根を滑ってくるこのスタイルは、
雪崩リスクが低く、
なおかつ長いスキーではなかなか滑らせてくれない、
密集した木立ちをもわりと滑ることが出来るスタイルだと
やるたびに実感してます。また、

テクニックをさらに磨けば、
残雪期にスノーシューや冬靴でのみ行けるルートが、
このスタイルでも行けるはずだと思ってます。
いや、もはや残雪期という括りさえないのかもしれません。

BC SHORTで、常念山脈縦走1DAY、
東鎌尾根と槍沢経由の安曇野から槍ヶ岳1DAY、
稜線の幕営を基点に、たくさんの尾根をラウンドトリップ……。

同じSKIでも長いものとは
ここまで行けるエリアやルートが違ってくるし、
むしろ広がっていると言って良いでしょうか。

行ける山域やルートが増えたことは、
本当に嬉しいことです。

いっぽうで、
私の趣向する登山スタイルには
1DAYが圧倒的におおいのですが、
それは山岳スキーレースや記録的なアルパイン登山などによって進化した、
軽量マテリアルのお陰でもあります。

わたしの認識では、常念岳厳冬期登山一つとっても、
よほどの健脚や山スキー上級者という超例外を除いて、
重荷と幕営の2DAYSが一般的です。
もちろん、”うえ”で幕営するアルパイン上級者は敢えてそれを選択してるのですが、
それでも厳冬期1DAYという選択肢が増えたことは、
日本のアルプスにも登山スタイルが多様化してきた
証左でもあると思うんですね。

わたしは飽き性なとこがあるので、
それっていいなぁ~って思います(笑)

もちろんその裏で、
スキー技術の研鑽、道具のチョイス、日頃のトレーニング、
経験や知識にハートといったものがなくてはなりません。

そのうえで、
雪山におけるボーダレスでミックスな登山スタイルでもある
このBC SHORT。
今後さらに発展させつつ、
業界において一つのアクセントにでもなれば光栄でございます。

暖かな2月の松本にて(2018)

田中 ゆうじん

THANK YOU///

BC SHORT誕生の瞬間!? 北ア常念岳厳冬期単独1FA~ “BC SHORT”というNewモード vol.3/4

【BC SHORTが生まれた瞬間】(写真・文:yujin)

ときは2018冬、ところは北アルプスのおひざ元、松本…。

家のすぐ前を一時間に一本の頻度で大糸線が通り過ぎる。
未明の始発ともなると、凍った電線とパンタグラフとの摩擦からか、
「シューッ、シューッ」と火花を散らす音は、
すっかり閉ざされた厳冬期のいわば風物詩。

前回の「BC SHORTが生まれるまで
その2」からおよそ一年が経ってしまった。

自分事だが、一日1.5食平均の生活がもう15年くらいつづいている。
昼には食べてもオニギリ一つ、
夜はBEERとWINEと好きなものを好きなだけという食事スタイルである。
ただ、二人の子供もうえは高校生と成長するにつれ、
食べる量も増えれば好みもあるので、
自分が好きなものだけとはさすがにいかず、
週5で夕食当番をしている身として献立にはけっこう気を遣っているのだ。

ちなみに昨夜は、豚ひき肉と春雨とネギの炒め物に漬物、
そしてご飯に味噌汁。
あと、オメガ3系の良質な油はなるべく摂るようにしている。
たとえば、亜麻仁オイルやエゴマ油。

人間は、良質の油と水と腸が大事だとおもっている!

良質な油を摂って脂肪を燃焼させやすい体にすることと、
腸が喜ぶ食生活をすること。

話が逸れたついでに触れておくとすると、
作シーズンは山仲間からいただいた野生のシカ肉やイノシシ肉を焼肉にしたり、
またはスーパーで手に入れた牛肉といっしょに
燻製にしたりしたものをザックに忍ばせ、
あとは水だけ持って北アルプスの後立山連峰を縦走したりした。
脂肪を効率よく燃焼させてエネルギーとして使う、
ファットバーニングの身体に興味がわいたからだ。

ある説によれば、
そもそも人間の体は糖質をエネルギー源としてつくられていないそうである。
人類400万年もの間、じつは体に蓄えた脂質をエネルギー源として生きてきた。
穀物を栽培してその糖質からエネルギー得るようになったのは、
今からたった1万年前ということ。

現代の精神的なものをふくめたあらゆる病気、肥満などが、
それら砂糖や炭水化物を減らすことで改善されるデータもあるほどだ。

こうして考えると、
わたしたちは、もはや大洗脳社会に生きているといってもいいだろうか。

大事なのは、あらゆる情報を取捨選択する術を身につけ、
なおかつ自分で考えて試してみることだと思っている。
それには、山のような精神や体が研ぎ澄まされるフィールドはもってこいである。

先の水と燻製の話にもどるが、いやはや不思議というかなんというか、
登り返しで力が入らなくなってくるなどまだまだ検証の余地はたくさんあるが、
実際は水だけで10hは行動できたということ。
しかも、消費エネルギーが顕著な山の縦走だ。
まだまだ普段の食生活をただしていけば、さらに動けるはず。

と言いつつも、自分自身、お米が大好き。
山にときおり持っていくオニギリや、
夕食に少量だけどいただく白米はやはり外せない。
正月の雑煮なんて大好物である。
今後もバランスを大事に美味しくいただいていこうと思っている。

また、文章を書くのはどうしても空腹を感じるので、
毎朝飲んでるネパール珈琲に、
グラスフェッドのギー(ないときはMCTオイル)を入れて楽しんでいる。

というのは空想で、ネパール珈琲を切らしてるので、
最近はもっぱら長らくお世話になってきたゴールドブレンドだ(笑)

余談だが、ネパール珈琲とは、
ご縁があって文字通りネパールに住む生産者から、
今後YAMANOVA(山や冒険をテーマとしたコミュニティ)
が直接に取り引きをして、販売するという素敵なプロジェクトである。

予想どおり前置きがながくなった。
さて、BC SHORTの話題。

やや大げさなタイトルだが、
ええい遠慮せず書いてやれい~!とばかりに、
「BC SHORTが生まれた瞬間」などと見出しをつけてみた。
結果からいうと、やり始めて2シーズン目である2017年2月に、
厳冬期常念岳ソロBC SHORTを無事に達成した。
その日を、「BC SHORTが生まれた瞬間」とさっき決めた(笑)

その日は晴天でまたとない厳冬期(2月までそういうらしい)の
ラストチャンスだった。
距離は、安曇野にあるほりで~湯の先の閉ざしている林道ゲートからスタートし、
常念岳東尾根をひたすら詰める山頂の往復約22㎞。
累積標高差は±2,100m。

ソロではペースが落ちることがおおいので、
4年前の0300スタートより一時間早めた0200スタートとした。
ゲート先からは例年雪があるのでスキー&シールでのハイクアップで始めるのだが、
あいにく雪が少なく、ブーツでそのまま尾根の取りつきまで歩き出す。
ところが、予想外に融雪がすすんでいたので、
朝令暮改よろしくさらに林道を歩き、まゆみ池の上の林道から東尾根に合流する。
じつは、このとき林道ショートカットで谷筋をつめたときに猛ラッセル
(深い雪のなかを自力で登る)に遭ったかとおもえば、
分岐を間違えたりで30分ほどロスをする。

すくなくとも、自分にとっては里山でブンブンSHORT SKIしてるだけじゃなく、
ビッグマウンテンもやれることを証明するべく挑んだ、
BC SHORTでの厳冬期常念岳1DAYという未知のチャレンジだったし、
このスタイルで一つの結果を残したいとそれまで孤軍奮闘やってきた。
想定外はつきものとはいえ、
たとえ30分であろうとタイムロスはけっこうなネガティヴ要素である。

Tree line(森林限界)約2,200mまで、
経験から5hくらいで行ければいいさ…
とあらゆる邪念といっしょに”いなす”ことにする。

余談2だが、わたしはひどい花粉症で、
もう20年以上まえだと思うが、あるときこの“いなす”ことをおぼえてからは、
まったくマスクもなにもせず花粉症から解放された。

もちろん、涙目でクシャミの波状攻撃にたまに襲われることがあろうと、
わたしは花粉をいなすことに成功しているとおもっている。
“いなす”って心の技術だな(笑)

じつは、この2週まえに当東尾根をやはり同スタイルのソロで試していた。
執拗なラッセルと中途半端な気概もあっただろうか、
目標の1,955mの尾根上にある小ピーク手前で引き返すという体たらく。
ただし、木立ちと急斜面の長い尾根を圧倒的な速さで
SKI DOWNが可能であると経験できたことは、相当な自信につながっていた。

しかも、ショートSKIに付けているテックビンディングでも、
ヒールフリー(踵を固定しない)で滑って、
小さな登り返しもなんなくこなせることはすでに実証済みだ。
なんども同スタイルで入ってきた里山や北アの前山である
鍋冠山でのトレーニング経験はだてじゃねえぞ(笑)

さて、ソロラッセルと雪でかしがったいくつもの枝雪をストックで落としながら、
また、シールパーツの落とし物に戻ったりとロスしつつも、
森林限界に約6h半で到達した。
最速記録よりもすでに90分遅れていた。
ただ、以前より1h早くスタートしたことで気持ちに余裕はあった。
ここまでは、言ってみればおもに体力と根気だけでこれる前哨戦である。

ここからの、
木はなく風に叩かれた艶やかな山頂へとつながるリッヂライン(尾根)は、
街から眺めるには本当に美しいが、
ひとたび風が吹けば−40℃を優に下回る厳しい世界でもある。
幸いこの日の風は穏やかで、視界も良好、
最高のコンディションが整っていたのだが、やはり厳冬期ソロは甘くない。

トラバース(尾根上の小ピークや岩稜などを避けて通るために迂回すること)
する雪面は硬く、一歩一歩スキーアイゼンとスキーのエッヂを食い込ます。
一度バランスを崩せば真っ白な硬い急斜面は無情の滑落を黙ってみるのみで、
大ケガじゃ済まないだろう。ソロでもとくに危険なときはこんなときだ。

パートナーがいればアンザイレン(ロープで確保しあう)や、
万一滑落してもその後の対処がまだましだが、ソロではそれができない。
足のスパイクを一たびミスしたときのリカバリーは、
左右のストックではまず出来ないし、
山側にピッケルを替わりに持ったとしても、
スキーのハイクアップがぎこちなく難しい。

面倒でも、命が惜しければブーツアイゼンとピッケルスタイルに変えるか、
パートナーと来ることだ。
ミスの初動から第一次のリカバリーできる術を持たないことは、
リスク対策が希薄ということでもあるからだ。

でも、これは持論だが、
そんな超集中状態にあるときの技術は普段よりも格段にレベルが高いし、
技術や体力や知識や経験は、
装備に代わるものとしてじつはおおきく寄与していると思うのだ。

ハイクアップの技術に自信はあったが、
さすがにこの後、ウィペット(BD社のストックで、
グリップの上にピッケル機能がついたもの)を1本購入した。

森林限界以降の幾度とあったトラバースはこの日の核心だった。
これは結果論だが、
経験上ラッセルや見えない落とし穴のおおい
この東尾根や前常念から山頂への馬の背尾根は、
この日はブーツアイゼンがもっとも効率よい選択肢であった。

要するに例外をのぞいて、
スキーを履いてなくとも雪面に足が埋まらないほど
硬い絶好のコンディションであったということだ。

スタートから10h10min後の1216PM、
SHORT SKIをザックに背負ったスタイルで、
2,857mの常念岳山頂でセルフタイマーのボタンを押した。

厳冬期北アルプス山頂への到達から
SHORT SKI DOWNという未知の体験まで、
パノラマの絶景と最高の天気ということも相まって、
20分を要した。山頂からみえる自分が住む町がみえる。

あそこまで、どうしても無事に帰りたい…。
成功して、帰りに贅沢にラーメンを食って、
いつものSEIYUでプレミアムモルツを買って帰ってやろうと思った。

BC SHORT誕生の瞬間!? 北ア常念岳厳冬期単独1FA~ “BC SHORT”というNewモード vol.2/4


※この記事は、2013年2月14日の
常念岳厳冬期1DAY登山から派生したものです

私は、相も変わらずに南北に細長くのぼる松本・安曇平の東側に座する、
筑摩山地の2,000m級の美ヶ原や鉢伏山へ、3月に入ってもスキーで登っていた。
2009年から一人でチャレンジをつづけている、
山岳スキー日本選手権という、
スキーで登る・スキー担いで登る・滑るといった、成績こそ中庸であったが、
そのキワモノ系のレースを終えるまでスキーブーツは脱ぎたくない、
そんなことがなんとなく毎年の恒例となっていたからだ。

ワカンでもスノーシューでもない、
やっぱスキーなんだよ…と一人気を吐いて、
誰もスキーでは来ないような山のシングルトラックや、
藪の濃いエリアをスキーで登っていると、さすがにハイクアップが上達したようだ。
スキーアイゼンさえ着ければ、限界はもちろんあれど、
わりと自由自在にどこでも登れるようになっていた。
ただし、氷化した北ア針ノ木雪渓の急斜面などでびびるのは、
いまも昔も変わり映えなしである。

2013年2月14日午前3時。
北アルプス常念岳の麓にある“ほりでー湯”の先にある冬季通行止のゲート前に
前述の3人は集合した。
凛とした、張り詰めた空気。ゲートの先は閉ざされた冬の世界である。

2012年の厳冬期から数えて、常念岳へとのびる南東尾根・東尾根の偵察登山は、
各々延べ3-4回はすでに終えていた。
ただし、いずれも森林限界までが精一杯だった。
なぜかといえば、ノイチ氏以外は普段アルプスを1DAYスピード登山してるので
体力こそあれど、本格的な雪山の経験がすくなく、
スノーシューまたはスキーから、
ブーツアイゼン&ピッケルへと装備チェンジをしつつ、
山頂を目指すアルパインスタイルだからだ。
ゆえに、前常念岳手前の急な岩稜帯のルートファインディングやアイゼンワークは、
まだまだ心もとない。

いっぽう、ノイチ氏にとっては、
まさか厳冬期常念岳を1DAYでやることは夢にも思わなかったわけで。
体力差を感じた昨年から相当に走り込んできていて、
ゆえに一大決心をして挑む山行と位置づけをしていた。

三者三様、一発勝負というわけだ。

さて、登山スタイルだが、
ノイチ・西田は登りも下りも当尾根にもっとも適合しているスノーシューをチョイス。
もちろん異論なし。
いっぽう私は、前日まで”考えたが”やはりスキーをチョイスした。
スキーはそれまでに3度この尾根で試してきて、
登りはスノーシューに時折遅れはするが、ラッセルでの有利性があり、
藪や急登のスキーさばきはすっかり体得していた。
また森林限界以降は、スノーシューやスキーはデポをして、
ブーツアイゼンスタイルで登るので、まず問題なくいけると踏んでいた。

ではなぜ考える必要がある?

それは、スキーでこの厳冬期常念岳を決行するときの問題は、
普通なら圧倒的有利であるはずの下りにあったのである。
以下に、当日の記録をまじえつつ、スキーの特性について考察してみたい。

登山道というものは、谷と谷の間にある隆起した場所、
いわゆる尾根上につくることが多い。
もちろん、水が流れる谷筋・沢筋といった尾根とは対称的な場所にもルートはおおい。
どちらも、日照・風当たり・アップダウン・落石・滑落、
雪山でいえば雪崩などの条件やリスクにおいては、一長一短である。

雪山を登る場合は、深く雪に閉ざされた夏道とはほぼ無縁の世界だ。
雪崩の巣である谷筋ではなく、ルート選びもしやすく、
雪崩リスクの低い尾根筋を登っていくことが一般的である。
ただし、そこには夏に登山道が必ずしもあるわけではないので、
木立が密集している尾根もあれば、また、沢筋と違ってアップダウンがあるし、
細く切り立ったヤセ尾根の場合は滑落のリスクさえ高まる。
それに、気温の低い3,000mの稜線で強風が吹けば、
いわゆる”風”などと悠長なことを言っていられないほど、
自然の脅威に曝され、凍傷、
低体温や滑落を誘発する怖ろしいものに変貌するのである。

冬に北アルプスの稜線で強風が吹けば、
体感温度がマイナス40~60℃なんてことはざらである。

さて、そんな常念岳を東尾根から約2,000m登れば、
当然2,000m下りてくるわけだが、
スキーのデポ地点から最低でも1,000mをスキーで降りてくる。
これぞスキーの醍醐味!
スノーシューで3時間かかるところを、スキーなら1時間でぴゅーっと!
さらに、もしそこがゲレンデなら10分とかからないだろう(笑)

ただし、スキーをやらせてくれたらの話…。

常念岳東尾根は、
おそらく古道があったと推測される平均して登り降りしやすい勾配ではあるが、
スキーで滑って降りるとなると、登山道のない密集した木立ちは凶器そのもので、
ターンをようやく切ったあとには、すぐ木が立ちはだかるという連続である。
また、尾根どおしというのはどうしても、細かなアップダウンが付きもので、
踵を固定したスキー滑走モードにしたのも束の間、
気づけばカニ歩きや逆ハの字で登り返す始末。
ゆえに、ブーツのみ滑走モードで固定して、
踵のみフリーでゆっくりとボーゲンや横滑りで降りてくるスタイルが、
もっとも山スキー上級者でない私たちが苦悩の末生み出した
順当に降りてこれるスタイルではあるが、
雪質・急斜面・木立ち・藪・大腿筋の乳酸・転倒と、やはり甘くはない。

その点、スノーシューはそんなスキーを横目に、
ウサギとカメのカメさんよろしく、
細かなアップダウンもなんのその、
立ち止まることなくあたかも山頂に到達したあとの消化試合の様に、
淡々と歩みをすすめる最速のマテリアルだ。

事実のこの日、約9hで山頂にめでたく到達した3人。
厳冬期常念岳1DAYの折り返し地点である山頂では、
いままでの労苦を嚙みしめつつも、
ほんの3分ほどだが至福のときを過ごしていた。

しかし、そのなかにあってただ一人私においては、
晴れ晴れとしない心境でこの先のスキーを慮っていた 。

(※もちろん、
前常念直下のトラバースにおけるピッケル&アイゼンワークなど、
気の抜けない箇所は多く、森林限界までは緊張の連続である)

「先に下山してて構わないよー」

森林限界からのスキーで、一発目に大転倒したわたしは、
あとの2人に笑顔でそう告げた。

せっかくだから一緒に下山しよう、となんども言ってくれていた2人が、
さすがに業を煮やして良いペースで下山をスタートしたのは、
おそらく10回くらい転倒した頃だろうか。

いよいよ、ここからが勝負!
転んでもカッコ悪くても、
1,800mの小ピークの先の疎林地帯で必ずスノーシューの2人をシュッと抜いてやる…。

 

じつは、この数年後にわかることだが、
このときの私はブーツをウォークモード&スキーをヒールフリーで滑っていたらしく、
少しでも後傾になるとブーツのカフ(ふくらはぎに当たる部分)がフレキシブルなので、
たちまちバランスを崩して転倒するという繰り返しだったのである。

少なく見積もっても、この日30回は転倒しただろうか。
度重なる転倒から、スキーの煩わしさに、
それならと、ブーツで降りようと試みれば、
たちまち雪面に股下まで埋まるという現実。まったく進まない…。

ときおり街がみえる。うちの子供たちも今頃下校の時刻だろうか。
まさか、家で威厳に満ちたオトーサン?!
である私が、こんな山ん中で不格好に転んでは起き、
木に激突し、歩いては埋まり…という愚かな姿など、
想像だにしないだろうな…。あ~あ、の心境である。

 

午後4時35分、
彼らに一度も追いつくことなくほうほうの体でクルマに戻ってくると、
ノイチ氏が待っていてくれた。

2人のクルマにあったチョコレートは、
待ってるお子さんのために足早に帰った西田からの贈り物であった。
西田の15分後にノイチ氏、そしてその25分後に私という記録であった。

精神力・体力ともに使い果たした。
もう登山はいい、というやり切ったときの心境も十分に感じている。

満身創痍であったが、
気持ちは厳冬期1DAY常念岳をとうとう達成したという喜びで、
晴れ晴れとしていた。

 

BC SHORT誕生の瞬間!? 北アルプス常念岳厳冬期単独1FA~ “BC SHORT”というNewモード vol.1/4

【BC SHORTが生まれるまで】
※この記事は、2013年2月14日の
常念岳厳冬期1DAY登山から派生したものです


いま、一昨日やり終えたばかりのこの登山の心地よい余韻に
ひたりきっていて、
朝食のオリーヴオイル入り野菜ジュースと珈琲を飲みながら
これを書いている。

普段から、朝食はこのオリーヴオイル入り野菜ジュース、
昼はほどほど、すこし早い夕食は、
BeerとWineを心ゆくまで愉しみながら、
料理をしつつ気兼ねなく家族団らん食事をし、
一日を21時ころに終えるのが常である。
それは、午前に1DAY北アルプス登山があってもそう。

そんな食生活が奏功してるのか、
はたまた身体自体が山慣れしてきたのか、
夏の常念岳&蝶ヶ岳2座の周回は、
もはや水だけで行って帰ってこられる体に、
ようやくなってきたってものでぇい(エッヘン)。

(注:うそぶいているが、このパターンは、
縦走の登り返しでは、その実バテる(笑))

しかし!1DAY登山といえども、
10h以上冬山で動きつづけることは、
一日1.5食をかれこれ10年以上している私にとっては、
やはりちょっとした事件である。
さっきから、今日の昼は近くの中華食堂でチャーシュー麺を
食べることばかり考えている。
頭の右上に常念、左上にチャーシュー麺。
なぜだか筆致もなめらか、集中力が増すのである。

話は遡って、2012年の厳冬期だっただろうか、
本連載のタイトルにもある1FA(1day Fast Alpine)といって、
春夏秋冬をとおして北アルプス日帰り登山をおもに好んでやっていた私は、
ここ松本平にある我が家からもよくみえる、
北アルプス常念山脈主峰の常念岳(2,857m)を、
1FAできないかと妄想を開始した。

ちなみに、1FAでは、
標高約2,500m以上、標高差約1,000m以上とゆるく定義づけしている。

もっとも、当時(2009~2012年)は1FAではなく、
「快速trek」や「1DAY SPEED登山」などとネーミングした、
仲間やソロで、
朝飯前に往復する朝・常念や朝・蝶ヶ岳、朝・燕岳に朝・爺ヶ岳。
家から25㎞ある登山口までを自らの脚で走り、
プラス登山してまた走って帰ってくる家・常念。
それに、お隣の蝶ヶ岳をプラスした、超!家・常念などと、
話題性重視の登山スタイルは、まわりからすると、いかにも軽くみえたようだ。

いま改めて実感するに、この文章がそもそも軽い。

ただし、三股駐車場~常念岳山頂への登りは1h 50min台、
これに蝶ヶ岳をいれた周回は4h 59min台。
また、中房や三股から槍ヶ岳の山頂にタッチし、
周回ないしは往復する”槍イチ”や、
それを北鎌尾根経由でいく1DAY北鎌ソロなど、
見た目の軽さとは裏腹に、その実相当な本気モードでやってきたことだけは、
ここで誤解のないように自分への慰めふくめ、一応記述しておくとする(笑)

ちなみに、2009年4月の山岳スキーレースを皮切りに、
フルからウルトラマラソン、トレイルランレースに山岳競争など、
20㎞から120㎞までの国内外の様々なレースにもチャレンジしてきたが、
いまは自分でルートや道具を考案する
MIXスピード登山や前述の1FAがおもなフィールドである。

やや前置きが長くなったが、厳冬期の常念岳は、
林道が冬季閉鎖されているゆえに、山頂までの距離は夏の比ではない。
記録をネットにて探してみるも差しあたって幕営の2DAYSこそ散見されるも、
1DAYはまず見当たらなかった。

となると、じゃあやってみようじゃない、
というのが1FAプレイヤーの性というもの。
早速、仲間と前常念から麓に恐竜の背のように
二本伸びる尾根の下見に出かけた。

単純なコースプロフィールとして、
山麓にある“ほりで~湯”の先にあるゲート-東尾根(もしくは南東尾根)
-前常念岳-常念岳の往復である。
沿面距離は往復で22㎞、累積標高差は約2,100mと、立派な1FA である。

このチャレンジのパートナーには、
2014年に日本海から太平洋へアルプス経由で横断する、
トランスジャパンアルプスレースで、
女性唯一の完走を果たして脚光を浴びることになる、
冬はテレマーカーの西田由香里。
その後、登山歴も数十年というベテランの
ノイチこと野田一郎氏が、合流することになる。

まずは、町から常念にむかって左をはしる南東尾根へ
西田と山スキーを履いて出かける。
南東尾根の取りつきは、
車をデポする標高約800mのゲートから歩いて6㎞強で標高1,200m弱。
末端のまゆみ池から疎林地帯を狙って一気に400m登って
標高1,700mの小ピークを目指すのだが、
いやはやこれが急登と藪があいまって、まったく捗らないのである。

やはりスキーは現実的じゃない!?
を嫌というほど思い知らされるのは、じつはこの後なんだが…。

街から見える恐竜の背のような尾根、その2,000m付近で初回は引き返した。
いま思えば、
よくぞスキーアイゼンなしであの藪と急登の尾根をキックターンだけで登っていったなと感心もする。ただし、厳冬期の1DAY常念岳を達成するのはもしかしたら夢の話なのかもしれない…、
そんなことが私の頭の中の大部分を占有しだしていた。

成功するには体力、テクニック、気象条件、雪質、そして強いハート…。
そのどれもが必要不可欠であった。

しかし気持ちというのは可笑しなもので、
数日も経てばその空気感はどこへやら。
気分を入れ替えて今度はノイチ氏をふくむ3人で同じ南東尾根をつめた。

今回はスノーシューを使用。
予想どおりスキーより短くて急登も得意なだけあって、
ぐんぐん標高をあげていく。スノーシューは表面積がスキーよりも小さい分、
まゆみ池からの急登400mアップの深雪ラッセルには苦労したが、
あとはスイスイだった。

じつはこの”スイスイ”がくせ者で、
その過不足なくこなせる様は、なんというか、
スキー登山にある緊張感や屈辱感、または抑揚みたいなものがまるでなく、
少なくとも自分の記憶にはなにも残らない。

3月の啓蟄となり、長い林道の雪解けもいっきにすすみ、
このチャレンジは2013年への持ち越しと決定した。

ただし、
下見した南東尾根の一本北をはしる東尾根のほうが
1FAをやるにはさらに有利かも、という仲間からの情報もあり、
この厳冬期常念岳1DAY、
いわゆる1FAへの前途は明るく2013年へ引き継いだのだった。
いささか気持ちは清々しくもあり、
また不向きなスキーでいけない悶々としたものがあったりと、
心中は複雑だった。

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